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広島高等裁判所岡山支部 昭和51年(ネ)144号 判決 1977年1月31日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は、原判決事実摘示(ただし、原審被告小柳寛の関係部分を除く)のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も被控訴人の控訴人に対する本訴請求は、原判決の限度においてこれを認容棄却すべきものと判断するものであり、その理由は次のとおり付加するほか、原判決理由(ただし、前記小柳寛の関係部分を除く)記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一五枚目表一一行目の次に左記のとおり付加する。

「控訴人は農薬散布の方法が年ごとに改善されている現今においては、被控訴人の如き作業方法が同後七年間も継続するものとはたやすく推認しがたい旨主張するけれども、右認定のとおり被控訴人は昭和二五年ころから本件事故時まで二〇余年間右作業に従事してきたものであり、県下における小規模農業の現状にかんがみれば、若干の改善が見込まれるにしても、被控訴人の如き人力を主体とした散布方法が近い将来不要をきたすものとは、たやすく予測しがたく、被控訴人の供述によれば、被控訴人は先天的か後天的かはともかく、農薬に対する免疫体質であるうえ、前記長期にわたる作業経験を有するものであることからすると、被控訴人が少くとも七年間右作業を請負うことができたであろうことは、容易に推認しうるところである。

そして、被控訴人がこれに代わるに他の内職を見出しうることを推認させるに足りる証拠はない。」

2  原判決一六枚目表一〇行目の次に左記のとおり付加する。

「控訴人は、交通事故に対する注意、対策の周知徹底された現在においては、下車したバスの後方から交通の激しい路上を横断しようとした被控訴人の不注意は相当大きく斟酌されるべきである旨主張するけれども、控訴人は自動車の運転にたずさわる者として乗降停車中のバスの後方から老幼を問わず、人が路上に出て来ることがあるのを当然予測して安全な方法で運転すべきであつたうえ、前認定のとおり当時控訴人は対向車の前照灯により前方状況の把握が困難になつていたのであるから、なおさら減速運転すべきであつたのに、前記速度のまま進行したものであることからすると、当時被控訴人が分別のある成人であり、時刻が夜間であつたことを考慮しても、右認定の割合を変更すべき要をみない。

二  してみれば、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤宏 山下進 篠森眞之)

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